いくら働いても楽にならない。毎日が面白くない。もっといい暮らしがしたい。高級なクルマに乗りたい。豪華な海外旅行をしてみたい。
人間の欲望、特に物に関する欲望はとどまるところを知りません。

でも考えてみてください。
○毎日働いて糧を得ているのではないですか?。
○面白い毎日とはどんなものですか?。
○いい暮らしとはどんなものですか?。
○あなた一人が移動するのに、高級なクルマが必要ですか?。
○豪華な海外旅行で得られるものは何ですか?。

こんな質問をぶつけてみると、大抵の人は答えに窮するのではないでしょうか。

☆毎日、仕事をして生きていられるだけで幸せです。
☆日々身の回りで面白いことが起こっていても気付かないだけです。
☆食べて、着て、休めればいいのです。
☆安全に便利に移動できれば十分です。
☆海外旅行に出かけられるだけでも幸せです。

私の周りではこのような答えは返って来ません。

欲望は限りのないものです、でも、その多くが本当に必要なものかどうか、気付いている人は少ないと思います。

私は、本当に必要なものは与えられると信じています。

私事で恐縮ですが、私の所有していた乗用車は車検が切れたために乗ることが出来なくなりました。修理見積もりをとったところ、とても支払える金額ではないことが判明しました。仮に修理を行わずに車検を通したところで、これから2年間無事に過ごせる保障はありません。
仕事上で必要な道具を一つ失ったのです。当初はとても落ち込みました、仕事にも満足に出かけられない、買い物も歩いて行かなければならない。

でも、ある日、ふと思ったのです。
私にはクルマは無くとも、元気に歩ける足があるじゃないか。
その上、自転車だってあるじゃないか。
その自転車で教会にも通い、営業にも出ました。

しかし、折りたたみ仕様のレジャーサイクルでは長距離は走れません。その上、荷物を積もうにもキャリアもカゴも無いのです。
そんな時、あるリサイクル屋の店頭に自転車を見つけました。私の乗っていたものに比べれば古びて、錆が浮き、見るからに安そうな代物でした。
そこで私は店主に、私の自転車と交換してくれないかと尋ねました。店頭にあった自転車の価格は5千円、私のは買ってから殆ど乗らずに保管しておいた3万円はするものです。

常識からすれば交換などするはずありません。店主は私のことを変わった人間だと思ったに違いありません。
しばらく考えた後、店主は交換に応じてくれました。私が店頭にあった自転車に乗って帰ろうとするとき、再度、確認を求められました、返品交換は出来ないと。私は頷き、その店を後にしました。

知り合いにこの顛末を話すと、誰もが呆れます。あの自転車とコレを交換したの?と明からに冷めた顔を向けます。
私の考えからすれば、キャリアも夜間走行可能のライトもいままでの自転車には無かったものですし、車輪も大きくなり長距離の走行が可能になったのです。

これこそが私が必要としていたものです、それを与えて頂いたのですからこれ以上に嬉しいことはありません。

また、その後、会社を興すことが出来ました。その二日後、協力者が現れ共同経営者に就任しました。

やはりクルマが無いと営業に支障を来たすので会社名義で分割払いを申し込みました。興して間もない会社ですから断られるのが当然です、それが審査に通ったのです。
同時に他社でもリース契約を申し込みましたが、こちらはあっけなく断られました。
車齢10年にもなろうとする中古車ですが、仕事をするには支障ありません。先ほども申しましたように、無事に目的地に着けばいいのです。

以前の私でしたら決して妥協できなかったかもしれませんが、クルマは道具です、他人に見栄を張るものではないのです。

今、こうして思えば、私に必要の無いものは去って行きました。

そして、必要なものが与えられたのです。

2010.07.30 入口義信